株式会社丸和技研の特徴

耐衝撃性を考慮した多層チップビットの開発 -実験・解析編-

  • 株式会社丸和技研 正会員 佐々木 誠 嘉屋 文隆
  • 大成建設株式会社 正会員 森田 泰司

1.はじめに

近年、シールド工法は長距離掘進や玉石・礫混じり地盤および岩盤層での施工例が増大しており、そのような 施工環境下においては、カッタービットが施工中に地盤内の礫や玉石との接触で生じる衝撃により、超硬チップ が破損し、切削能力の低下を引き起こす。このことからビットの耐衝撃性に着目し、図-1 に示すように玉石・礫 混じり地盤において、切削機能の維持を目的とした多層チップビットを考案し、性能評価を行うために静的載荷 実験および衝撃解析・実験を実施した。

①地山の掘削

図-1 多層チップビットのメカニズム(イメージ図)
②玉石・礫の掘削

図-1 多層チップビットのメカニズム(イメージ図)
③玉石・礫の掘削
(チップの割れ)
図-1 多層チップビットのメカニズム(イメージ図)
④玉石・礫の掘削
(チップの欠け)
図-1 多層チップビットのメカニズム(イメージ図)
⑤玉石・礫の掘削
(チップの割れ)
図-1 多層チップビットのメカニズム(イメージ図)
⑥2次チップによる掘削
図-1 多層チップビットのメカニズム(イメージ図)

図-1 多層チップビットのメカニズム(イメージ図)

2.静的載荷実験

(1)実験要領
検討するビット形状を図-2 に示し、検討モデルを図-3 に示す。基本形は1 層構造のMODEL1 とし、多層構造は2 層として1 層目と2 層目に段差のないMODEL2-1 と、段差を有するMODEL2-2 とする。MODEL2 の超硬チップ形状は、MODEL1 の約75%の体積になるように板厚と高さを決定した。また、載荷方法は図-2 に示すとおり切削方向、推進方向の2 方向行い、供試体は3 体ずつとした。実験は2,000kN万能試験機で行い、最大荷重の測定を行った。
図-3 検討モデル
図-3 検討モデル
図-2 ビット形状
図-2 ビット形状
(2)実験結果
実験結果を表-1 に示す。これより平均値を見ていくと、切削方向はMODEL1の283.3kN に対してMODEL2-1 は280.0kN で99%、MODEL2-2 は208.7kNで74%となった。推進方向はMODEL1の377.3kN に対してMODEL2-1 は370.0kN で98%、MODEL2-2 は335.7kNで89%となった。これより、2 層目のチップに段差を有するMODEL2-2 は切削・推進方向共に基本形のMODEL1より約10~25%程度強度が低下するが、MODEL2-1 は基本形のMODEL1 と同等の強度を有すると考えられる。
No.切削方向推進方向
MODEL1MODEL2-1MODEL2-2MODEL1MODEL2-1MODEL2-2
1309325219320292337
2266253205405368312
3275262202407450358
平均283.3280.0208.7377.3370.0335.7
表-1 実験結果(単位:kN)

キーワード
シールドマシン、長距離掘削、カッタービット、静的載荷実験、耐衝撃性
連絡先
〒822-0003 福岡県直方市大字上頓野4965-1 株式会社丸和技研 技術営業グループ TEL0949-26-6733

3.自由落下による衝撃解析

(1)解析要領
多層チップビットの耐衝撃特性を把握するために、FEMによる検討を行った。解析ソフトはCOSMOSWork を使用し弾性解析を行った。解析モデルは3次元モデルとし、解析条件は図-4 に示すように、ビットが切削方向に自由落下して、超硬チップ先端部がターゲットに衝突した後の解析を行った。ビットが衝突するターゲットは剛体とし、衝突速度を1.0m/s とし、衝突後100μs まで解析を行った。
図-4 解析条件
図-4 解析条件
(2)解析結果
FEM の解析結果は、超硬チップ表面の最大主応力に着目することとした。超硬チップ表面先端部の応力分布図を図-5 に示す。これより、1 層目の超硬チップ(1 次チップ)表面の最大主応力は、MODEL1 が最大で1,396MPa 、MODEL2-1 が1,195MPa、MODEL2-2 が1,150MPaとなり、2 層タイプは1 層タイプより発生応力が15~20%程度低いことから、1 層タイプより耐衝撃性に優れていると考えられる。また、2 層目の超硬チップ(2 次チップ)の最大主応力は、MODEL2-1 が24MPa、MODEL2-2 が27MPa となり、2次チップの応力は、1 次チップに対して2%程度の応力になっていることから、衝突速度を1.0m/s 程度の衝撃力では2次チップに影響しないと考えられる。
図-5 超硬チップ表面の最大主応力分布
図-5 超硬チップ表面の最大主応力分布

4.落錘式衝撃実験

(1)実験要領
多層チップビットの耐衝撃性特性を把握するために、落錘式衝撃実験を行った。図-6 に実験概略図を示し、図-7 にビット形状を示す。ビットの幅は30mm とした。落錐実験はビットの切削面に重錘(2.5kg)を落下高さ650mm から自由落下させて、ビットが破壊する時の破壊状態の把握を行った。
(2)実験結果
図-8 に超硬チップ部の破壊状態写真を示す。これより、基本形のMODEL1 は、超硬チップの背面までクラックが進展しているが、多層チップビットのMODEL2は1 次チップのみの破壊に止まっていることが分かる。このことから、多層チップビットを用いることにより、破壊領域を減少することが可能であり、1 次チップが破壊した後、2 次チップが鋭利な状態で現れ、ビットの切削機能を消失せずに施工を継続することが可能であると考えられる。
図-7 衝撃実験ビット形状
図-7 衝撃実験
ビット形状
図-6 衝撃実験概略図
図-6 衝撃実験概略図

5.まとめ

(2)解析結果
多層チップビットは、静的荷重に対しては基本形状と同等の機能を有し、衝撃荷重に対しては基本形より効果があると考えられる。今後の予定では、より詳細な耐衝撃性の評価を行うと共に、実工事における実証実験を行っていく。
図-8 破損状態
図-8 破損状態

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